10月の連休は飯豊連峰へ。

福島・山形・新潟の三県にまたがる巨大な連峰を3泊4日で踏破する計画を立てました。

1日目

会津若松で前泊し、在来線で野沢駅まで向かい、そこからタクシーで弥平四郎登山口へ向かいました。

最も歴史のある川入ではなく、歩行時間が短く、危険箇所の少ない弥平四郎からのルートを選びましたが、そこは飯豊。
厳しい急登が続きます。それでも、美しいブナ林や、ミズナラの大木に圧倒され、雪深い地域に来たことを実感できました。

木漏れ日の差す中、ブナ林を進む。荷物は重い。

尾根に上がると、青空バックとは行かないものの、美しい紅葉が迎えてくれ、気分が上がります。
三国小屋で川入からの道と合流すると、登山道は険しさを増していきます。
しかし、登り続けたご褒美に、ガスは次第に上がり、赤・黄・緑のグラデーションに彩られた雄大な山並みを眺めることができました。

登るに従って季節は移ろいゆく
葉が紅葉する中、花を咲かせるチングルマ
切合小屋付近から草履塚の紅葉
本山小屋を目指して進む
飯豊連峰最高峰の大日岳が姿を現した
どっしりと構える飯豊本山
笹の海の中に、まるでミニチュアのような黄葉のダケカンバ。そして、真紅のナナカマド

少し遅くなってしまいましたが、無事に本山小屋に到着し、鍋で暖まりました。

本日の夕食は鶏白湯鍋

2日目

風の動きと秋雨前線によって、無情にも予報は数日前よりも悪化傾向に・・・。
会津若松、米沢、新潟の街明かりはゆらめき、みぞれのようなものが叩きつけていました。
この先どうしようか。引き返すことも十分に検討しましたが、半日天気が保つことを信じて先に進む決断をしました。

なるべく早く出発したかったので、飯豊本山の頂上はまだ暗いうちに登頂。
そして、飯豊連峰最高峰の大日岳は残念ながらパスすることにしました。

夜明け前の飯豊山山頂

夜明け過ぎは、まだ薄日も差して大日岳まで行けそうな雰囲気もありましたが、近づくにつれ小雨となり、まるで「今日はやめておけ」と、山に言われているような気分でした。

一度暗転した天候も、次第に視界が開け、持ち直しました。
一喜一憂は程々に、やるべきことをやるのが山との向き合い方ですが(ただの私見です笑)、視界が開けると歓声が上がります。

翼を広げたような大日岳
ダイグラ尾根を従えた飯豊山

この日は早めに、梅花皮小屋で昨日の長時間行動の疲れを癒すとします。

ちなみに梅花皮は「カイラギ」と読みます。エイの背中の縮れた皮の模様のことらしく、梅の小花を散らしたような模様だそう。
石転び沢の雪渓がそのような模様に言えることから、梅花皮沢の地名がつけられました。

今日は時間があるので、モッツァレラを生ハムで巻くよー
生ハムチーズ
豚バラのペミカンを入れた麻婆春雨

3日目

最も天候が悪い一日。とにかく風が強いのです。

この日は停滞となる可能性も考慮していましたが、気温は低くなく、雨自体はほとんど降っていないので、途中の小屋で様子を見つつ、ジワジワ進んで行くことにしました。笹や灌木のあるところはさることながら、吹き曝しでは煽られるほどの強風です。

暴風の頼母木山

門内小屋では、休憩にも関わらずお湯を出していだだき、芯から温まりました。
そこから、また2時間頑張って、頼母木小屋で行程を終えました。

お客様は厳しい行程だったのにも関わらず、終わってみれば「楽しかった」とケロリ。とても頼もしい限りです。

今日のおつまみはいぶりがっこクリームチーズ
最後の晩餐のカレー

4日目

最終日。朳差岳をカットし、足ノ松尾根から奥胎内ヒュッテに降りることにしました。
朳差岳は「エブリサシダケ」と読みます。エブリとは田植え前に地面を均す農機具のことです。

「残念だねぇ。紅葉最盛期なのに。」
シトシトと雨が降る中、小屋番の方がつぶやきました。ところが出発間際に小屋の外へ出ると、紅葉していることなど見当もつかなかった真っ白な世界が、急に色彩豊かな世界へと変わっていました。

斜面一面を赤、黄のグラデーションに染める紅葉に、夢中でシャッターを切ります。
なんという出来すぎた展開・・・。
それはまるで、意思を持った何かが存在しているようでした。

一面を埋め尽くす紅葉

足元には狂い咲きのハクサンイチゲが一輪、二輪。
と思ったら、あちらこちらに咲いています。初夏を告げる可憐な花と、厳しい季節の到来を予感させる刹那的な紅葉の共演に、感覚がついていきません。

水滴を纏い透き通ったハクサンイチゲ
初夏と秋色のコラボレーション

そして、また顔を上げると、朳差岳がどっしりと構えていました。
ガスが流れ、刻一刻変化する山々を、一瞬たりとも見逃したくないと思いながら、微笑を浮かべるその表情を眺めていました。

重厚さと品を兼ね備えた朳差岳と背後に朝日連峰
稜線を離れるのが惜しくなる、どこまでも歩きたい道
飯豊の紅葉の主役はミネカエデ

壮大でたおやかな稜線とは裏腹に、約束通り下山は険しいものになります。
急峻な尾根を慎重に下り、奥胎内ヒュッテに辿り着きました。

タクシーで中条駅へ。それから、新潟駅まで向かい、4日間の旅の打ち上げをして、帰途につきました。

雨にも負けず、風にも負けず、歩き通した4日間でした。
非常に悩ましい天候だったものの、短縮しつつもゴールできたことは、ポジティブな心持ちで臨んで下さったお客様のおかげです。

皆様、本当にお疲れ様でした。

装備の重量が増えがちな、避難小屋やテント泊での縦走も、全力でサポートいたしますので、ぜひご相談ください。

Memo

日程

2025年10月10〜13日(3泊4日)

行程

10/10 会津若松駅=〈JR磐越西線〉=野沢駅=〈タクシー〉(¥11,570)=弥平四郎登山口ー上ノ越ー三国岳ー切合小屋ー本山小屋(¥3,000/泊/人+トイレ¥100/泊/人)

10/11 本山小屋ー飯豊山ー御西小屋ー烏帽子岳ー梅花皮岳ー梅花皮小屋(¥2,500/泊/人)

10/12 梅花皮小屋ー北股岳ー門内岳ー地神山ー頼母木山ー頼母木小屋(¥2,000/泊/人)

10/13 頼母木小屋ー大石山ー足ノ松尾根ー奥胎内ヒュッテ=〈タクシー〉(¥11,600)=中条駅=〈JR羽越本線・白新線〉=新潟駅

情報

利用した水場ー切合小屋、本山小屋手前(一ノ王子を過ぎ、東へ5分下る)、梅花皮小屋(梅花皮岳側踏み跡、小屋から2分)、頼母木小屋

お手洗いー三国小屋、切合小屋、本山小屋、御西小屋、梅花皮小屋、門内小屋、頼母木小屋

管理人ー梅花皮小屋以外は在